ASCM CONNECT 2024 オースティン大会 3/4

日本初、ACJ 行本理事長がGPUEに登壇

 ASCM年次大会の一般参加者向けのセッションに先行して会期の初日に実施されるのが「Global Partner Updates & Exchange (GPUE)」である。あまり公に知られていないこの会合は、ASCMの米国内支部である「チャプター」と米国外の支部である「チャネルパートナー」の代表者が一堂に会する、いわばSCM教育の国際リーダーサミットである。本年参加した各支部の代表者は総勢142名、日本支部からは2名が参加した。GPUEは非公開のプログラムであり、SCMの世界標準を牽引する指導層が忌憚なく意見交換をするための貴重な場となっている。

SCM教育の国際リーダーサミット「GPUE」の会場

 本年のGPUEでは日本支部よりASCM COMMUNITY JAPAN理事長の行本顕氏が登壇した。日本支部がGPUEの場で発表の機会を得るのは約70年のASCM史上おそらく初の出来事である。来場者は100%英語を話すが非英語圏からの参加者も多く、第二言語である場合が少なくない。出席者の約半分を占めるこれらの人々のSCM教育者としての共通の課題は、地元での「世界標準のSCM」普及促進を阻む言語バリアを乗り越えなければならないことだろう。

 この「言語バリア」について行本理事長の講演の中で示された考察ポイントが2点ある。それはターミノロジーとコンセプトの両面からローカライゼーションを行う必要があること、そしてローカライゼーションの際に意図的な誤訳が紛れ込むリスクを避けるべきことだという。たとえば、日本国内で見かける「PSI (Production, Sales, Inventoryの頭文字)」というSCM用語が実は和製英語なのではないか、という話を耳にする。少なくともASCMのSCM用語辞典には採録されていない単語としてしばしば話題に上る。日本国内ではS&OPとマスタースケジューリングの中間概念として用いられる事が多いが、壇上からの問いかけに対して会場でこの用語を知るサプライチェイナーはわずか1名、なるほど噂は真実と思われた。

日本における「世界標準のSCM」推進の取り組みは多くのGPUE出席者の共感を得た

 GPUEの閉会後、エクスポホールでは出席者の懇親を兼ねた軽食とアルコール類が提供され、よりカジュアルな議論が参加者間で行われた。前述の講演について日本支部に声をかける参加者も多く、日本のSCMの現状と課題は会場の指導層の多くに共感をもって受け止められた様子が覗えた。同会場では対訳版のASCMディクショナリーを求める声があり、日本からハンドキャリーで持ち込んだ10冊(1冊あたり1キログラム弱!)はASCM本部の主要メンバーと、APAC地域を中心とするグローバルパートナーの手に渡ることとなった。

 欧米のコミュニティにおいては参加者おのおのが場に貢献することを期待されていることが多い。時宜を得た話題の提供によって場を盛り上げる(Make some noise)ことはこれに応えるものといえるだろう。今回、世界標準のSCM推進の議論に一石を投じる形となった日本支部の発信は、グローバル・サプライチェーンにおける日本のプレゼンス向上の観点からも意義あるものといえそうだ。
左からACJ行本理事長・ASCMアシュケナージCEO・JPC深谷氏
→次の記事「全てのサプライチェイナーのための年次大会、来年は・・・」(9/26公開)

ACJによる帰朝報告会「ACJ BEACON」のお申し込みはこちら→ACJ BEACON 2024「ASCM CONNECT 2024を振り返る」

人気の投稿