【Mitsu's pick up -Global SCM News from JAPAN】日本の半導体商社が示す米中間競争下での生存戦略について
米中対立により半導体サプライチェーンが再編される中、日本の半導体商社も生き残りをかけて戦略的協業に動いています。12/5付日経記事に出ていた事例をメインにご紹介いたします。
これまで自動車などの大手メーカーはコスト削減を狙い、半導体商社を介さずに半導体メーカーと直接取引をする傾向を強めていました。更に中韓との競争により日本の半導体業界が衰退するに伴い、商流は絞り込まれ、半導体商社も合従連衝の動きを加速させていきました。米ガートナーの調査によると、10年前と比較し現在の国内半導体商社の売上高ランキングは大きく入れ替わっているだけでなく、大手商社の寡占が進んでいる(上位5社の比率;33.9%→55.2%)状況です。そこにコロナ禍が襲い、供給網が分断され半導体の価格が高騰し自動車などの生産が滞りました。昨今ではトランプ氏の大統領就任が決まり更に関税が高まる事が想定されています。
このようにリスクが高まる中、需給の橋渡し、在庫確保やグローバルネットワークといった商社が持つ付加価値をより高めようとする動きが見られています。レスター(東京・港)は世界の半導体商社ビッグ3の一角であるWPG(台湾)との連携を強め、WPGの物流管理システムをシンガポールの販売会社に導入する事を公表しました。世界の半導体メーカーの供給余力をリアルタイムで把握し、レスターの顧客と繋ぐ事を目的としています。リョーサン(東京・千代田)は中国のEV開発大手と合弁会社を設立し、現地での半導体の調達力強化を図ります。
2019年にトランプ政権が”Entity list”に華為を追加して以来、米中貿易摩擦が過熱し日本企業も米国からの制約を受けざるを得ない状況となりました。ただ現状では、米国が規制している対象は数ナノm以下の先端品など一部の半導体のみとなっているため、制約が存在しない汎用品において中国製半導体は地経学的にも引き合いは強く、日本の半導体商社にとり事業を継続する意味合いは大きいと言えます。 只、今後突如として規制対象が拡大する可能性は十分にあり、需要の先取りやリスク分散といったソリューションをいかに付加価値として顧客に提供できるかが引き続き重要なファクターとなる見込みです。
<参考情報>
2024年12月3日 日本経済新聞6面 「されどグローバル化は続く」
2024年12月3日 日本経済新聞夕刊1面 「半導体規制 中国140社追加」
2024年12月5日 日本経済新聞17面「半導体商社、中国シフト」
「ネットワークパワー 日本の台頭」ミレヤ・ソリース 日本経済新聞出版、2024年
“Gartner Forecasts Worldwide Semiconductor Revenue to Grow 14% in 2025”
https://www.gartner.com/en/newsroom/press-releases/2024-10-28-gartner-forecasts-worldwide-semiconductor-revenue-to-grow-14-percent-in-2025
<筆者>
長者原 光浩(ちょうじゃはら みつひろ)APICS CPIM, CSCP, CLTD、PMP
ASCM COMMUNITY JAPAN運営委員。総合ICTベンダに勤務し、グローバルサプライチェーンに14年間従事。22年からSAP基幹システム刷新のプロジェクトに参画中。